Report

ここからまたはじめよう 2016年4月7日 (81)Sa Sa Art Projects

本日もカンボジアはプノンペンのお話です。

ではいってみよ!

「カンボジアに行くならここは絶対行っとけ」と、これまでの旅で出会った何人ものアーティストやキュレータに薦められたアートスペース。そこを訪れるため、ファンダーの一人とお昼過ぎに待ち合わせ。原チャリにニケツしてすぐに到着しました。「ホワイトビルディング」という歴史ある建物の中にあるそのスペースの名前は『Sa Sa Art Projects』。お話を聞かせてくれたのはキュレータ兼アーティストのVuth Lynoさん。

こちら「ホワイトビルディング」。でも全くホワイトじゃありません。

『Sa Sa Art Projects』は、2010年にLynoを含む6人のファウンダーによって設立されました。彼らは2009年から前身となる『Sa Sa Art Gallery』を運営していましたが、2011年にクローズ。現在は『Sa Sa Art Projects』だけを運営しています。※ちなみにそのスペースは昨日訪れた『SA SA BASSAC』へと受け継がれています。名前が重なっている理由はそこ!

『Sa Sa Art Projects』の主な活動は、レジデンス、写真やアートヒストリーを教えるクラス、またスペース外のアートプロジェクトなども。「ホワイトビルディング」内に、二つの部屋を借りていて、その一つが「ホワイトビルディング」自体をアーカイブする部屋になっています。なぜそのような部屋を設けているのかを Lynoに尋ねると、「ホワイトビルディング」がカンボジアの歴史を語る上で大変重要な建物であるからとのこと。
「ホワイトビルディング」は1960年代に建てられ、当時は学者やアーティストなど、文化人が多く暮らす最先端の集合住宅でした。その後、ポルポトによる独裁政権および大虐殺が起こり、都市の機能のほとんどが破壊されることになるのですが、その際もこの建物だけは壊されずに残ったのだといいます。カンボジ アの暗黒の時代を経て、その外観はひどく汚れ、現在は貧しい人々が多く暮らすここは、「ホワイトビルディング」という名前とは真逆の様相を呈していますが、むしろその対比から、この国が辿ってきた激動の時代を静かにそして雄弁に語りかけてくるかのようです。アーカイブルームには、建設された当時の写真と現在の写真が展示されていて、他にもこの建物をめぐる様々な資料を見ることができます。写真を見比べるだけでもとても感慨深い。

こちらがアーカイブルームの入り口。

昔のホワイトビルディング。確かに真っ白。

ビシッとしていて今からは想像がつかない。

こちらが現在のホワイトビルディング。見比べると時代の重みを感じます。

こんな感じで展示されています。

もう一つの部屋は、レジデンス作家のスタジオおよび、アートスクールのために使われています。『Sa Sa Art Projects』の活動は実験的な現代の表現とカンボジアのパブリックをつなぐためのものだとLynoが語るように、一般の人々とりわけ、このホワイトビルティングに暮らす子供から大人まで様々な人々がこの部屋に訪れます。年に6人ほどのアーティストをレジデンスに受け入れ、彼らの滞在中、オープンスタジオを行い一般に向けたワークショプなどを開催するほか、アートのクラスはすべて無償で行っているといいます。運営はグラントとドネーションのみでやっているそう。現在のメンバーは7人。Lynoを含む中心メンバーの3人は無償で関わっていて、彼らはNGOで働いていたり外の企画のキュレーションなどでお金を作っているそうです。

手すりのない階段を上がります。

レジデンスルームの入り口。二重の扉。

これが中。すごく綺麗です!

ここでアートクラスも開催されています。

『Sa Sa Art Projects』はレジデンス作家のスタジオがあるだけで、ギャラリーがない。そのことを質問すると、「このホワイトビルディング全体がギャラリーみたいなものだから」と笑いながらLynoは答えてくれました。建物の屋上でライブやパフォーマンスをやったり、時には1階の料理屋が上映会の会場になったり。地域と海外のアーティストそしてアートクラスに通う地元の学生という3つをヒエラルキーのない平行な関係で繋げていく『Sa Sa Art Projects』。アートが経済的な文脈だけでなく、世界と地域とを繋げるコミニケーションツールとして本当の意味で機能しているように見える彼らの活動は、希望に溢れたもののように思えました。この場所からカンボジアの未来を形成する沢山の種が植えられている。彼らの活動を知ることで、どこか荒んでいた心が徐々に治癒されていく、そんな感覚を覚えたのでした。
こちら階段部分。

歴史を知ると建物の見えかたも変わってきます。

彼が才能に溢れた若き先導者Lyno。

地域の人ともすごく仲良しです。

いく先々で地域のみんなが話しかけてきます。

未来を形作っていく確かな芽生え
Sa Sa Art Projects
http://www.sasaart.info/
https://www.facebook.com/pages/Sa-Sa-Art-Projects/337305713138723?ref=ts&fref=ts

カンボジアの歴史的、社会的な黒い部分にどっぷり浸かって完全に落ちていたのだけど、なんだか元気でました!ありがとうLyno!また会いましょう!!

プノンペン最後の夜、なぜか花火が上がっていました。感動!

さてこれにてプノンペンのリサーチも終了。次回はこの旅の最後の目的地、シュムリアップのお話です。

  • Sa Sa Art Projects

    #26-28 E2, the White Building, Sothearos Blvd., Phnom Penh
    設立年: 2010
    アクティビティ: レジデンス、スクール、ワークショップ、トーク、スクリーニング
    地域コミュニティとコンテンポラリーアートを地続きにするアートスペース