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知の貯金箱を開けろ 2016年2月1日 (19)KUNCI

インドネシア編の最初にして最大のターゲット、ジョグジャカルタことジョグジャ。あまりに豊潤すぎて逃げたいけど、ガンバルマーン。

ではいってみよ!

さて、本日は今回インドネシア滞在の受け入れ組織にもなってくれている『KUNCI』についてご紹介。この日のために、わざわざ、ジョグジャ在住のメンバーのみなさん全員が集まりお話を聞かせてくれました。

アーザッス!

インドネシアの言葉で“鍵”という意味をもつ『KUNCI』は、1999年にアンタリクサことAntariksaとNuraini Juliastuti(現在は海外にて博士課程)によって設立されました。二人は当時まだ学生で、3ヶ月に一度ニュースレターを発行することからその活動 を開始したそうです。当然メールなんてまだ普及していない時代で、小さな部屋ですべて手刷りでニュースレターを作っていて、内容はカルチュラルスタディー ズを中心にした記事だったそうです。そうこうしているうちに、アーティストによるプレゼンテーションの機会やトークショーなども徐々に開催するようになっていき、またアートやカルチャーに関する貴重な本や資料を閲覧できるライブラリーも充実していくなどして、その活動は広がっていたのだそう。

ファウンダーのアンタリクサ(左)と日本にもつい最近リサーチ滞在していたというギタ(右)

めちゃくちゃ頼れる若きメンバー、ディナ。

当時の手刷りニュースレター

場所も初めの小さな部屋から何回か移動を繰り返し、またメンバーも徐々に増えていき、現在はコアメンバーが5人と各種プロジェクトで関わっているメンバー が5人、それと犬のチャッピーもいれて10人+1匹のメンバーで活動しています。組織全体をまとめるリーダーやディレクターのような存在はいなく、それぞ れが皆平等な存在として関わっているとのこと。ただプロジェクトごとに担当のようなものはあって、その中で誰がディレクターをやるかなどを決めていくのだ そう。週に1度メンバー全員が参加するミーディングの場を設けていて、それぞれが担当しているプレジェクトの進捗状況などを共有し、みんなで意見を言い合 います。『KUNCI』の活動以外にも、メンバーそれぞれが個々でも様々なプロジェクトを抱えているようで、その興味や専門も良い意味でバラバラ。でもだからこそ多様な視点を確保しそれを共有できるのかもしれません。

黒いのがチャッピー。とても賢いです

レジデンスの部屋は3部屋あり、僕がいる間も世界中から様々な人が滞在していました。アーティストだけが滞在するのかを尋ねたところ、全然そんなことはな く、キュレータやリサーチャーなど『KUNCI』の活動に何かしら関係があれば滞在可能とのこと。滞在者の中には自分の研究や作品についてプレゼンや トークをする人も多くいて、その時はジョグジャ在住のアーティストや関係者が沢山訪れてきてくれます。おらも来週プレゼンやらないと、こえーなー、、、
そして『KUNCI』のメンバーではないのですが、“みんな大好きウォーウォー”ことWok The Rockが、ひと部屋借りて住んでいて、人を殺しかねないギラギラした目で、超ブッキラながら密かに滞在者を気にかけてくれたりもします。実はめちゃ優しい。

滞在中に開催されていたポーランドからレジデンスにやってきていたキュレータのトーク。

レジデンスの他にライブラリーも充実していて、本を閲覧するだけにここを訪れる人もいます。また基本的にはオープンスペースなので、特に用事がなくても 色々な人が本やノートパソコン片手にやってきて、それぞれの時間を過ごしていきます。公共機関じゃないのに、公共機関以上のホスピタリティー!!

お仕事したりご飯食べたりだべったり

以下、『KUNCI』のよくある風景
ナターシャ(黄金町バザール2015年参加)とウォーウォー(住人)

爆笑ディナ

こうしてKUNCIの夜はふけていきます

どのようにスペースを維持しているのか聞いてみましたが、賃貸のお金とメンバー数人のサラリーはオランダのあるファンデーションの助成金を近年ゲットしたそうで、そちらで賄っているとのこと。うーん、最高ですね。もちろん、これまでの活動が認められてのことであることは間違いありません。Ongoingもそんなお金がほちいなあ、って、まだまだですよね。
実際にお話を聞くまでよくわかっていなかったのですが、彼らはアーティストの集団ではなく、そしてキュレータの集団でもない。「いつもなんて説明しているの?」と尋ねたら「うーん、リサーチャーが一番しっくりくるかな」と笑いながら話してくれました。それぞれがそれぞれの興味をそれぞれのやり方でリサー チしていく。それって大学みたいだねと言ってみたら、大学では専門的なルールやコンテキストみたいなのが強すぎてあまり自由がきかないのだとか。大学や大 きなインスティチューションでは研究できないような分野や対象を独自のアプローチによって探っていくところに『KUNCI』としてのオリジナリティーが生まれるのでしょう。
そしてもう一点、ARTとはどんな関わりがあるのかを尋ねてみましたが、何より皆ARTが大好きであるということが一点。そしてもう一点は、ジョグジャで活動をしている以上、ARTはすべての場所にあって、避けることはできないのだという解答が帰ってきました。うーん、かっけえぇ。オラも言ってみて~。
『KUNCI』には、ディナやギタのような若い世代も次々関わっていて、そこにはヒエラルキーは存在しなく、ただ知識の交差が次々と起こりそれぞれに影響 を及ぼしている、そんな印象を受けました。メンバー全員がどこかに限界をもうけることなく、リサーチを続け、その側にはいつもアートがある。なんとも理想的な組織の形をひとつ見せてもらった気がしたのでした。

ではみんなでパチリ。

インドネシアの知の最前線にふれるならここは外せませんNe
KUNCI Cultural Studies Center
http://kunci.or.id/
https://www.facebook.com/groups/39286251054/?fref=ts

  • KUNCI

    Jalan Ngadinegaran MJ III/100 Jogjakarta
    設立年: 1999
    アクティビティ: ライブラリー、レジデンス、ワーキングスペース、展覧会の企画運営
    全メンバーがリサーチャーのコレクティブ