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美術館の後に 2016年3月12日 (60)POST-MUSEUM

今日はシンガポールのお話です。

ではいってみよ!

バンコクを後にし、シンガポールへとやってきました。当初、シンガポールは資本主義バリバリの国だから、オルタナティブスペースはないと踏んでいたのですが、旅をしているうちに、せっかくここまで来たのだからよってみっかとなり、短い期間だけど足を踏み入れることにしたのです。空港降りて電車は街に直結。車窓から見える風景は予想どおりスーパー都市。どこもかしこもきっちりと整備されている感じで、東京に帰ってきたかのようです。

とりあえず、あまり情報がないので美術館とかをまわってみます。まずはこちら、昨年末にオープンしたばかり、出来たてホヤホヤのナショナル・ギャラリー・シンガポール。

いやー半端なくでかいっす。

こちら屋上。水がはってありますなー。

そして屋上からの景色。すげーやーね。

東南アジアの摩天楼だわ。

そしておつぎはシンガポール美術館。

こちらは現代美術を専門に扱う美術館でした。キュレータのJohn Savageさんが案内をしてくれました!※写真撮るの忘れちった。

建物はもと男子校だったそう。

しかしまー、どこもかしこも、とっても整えられているというか、別の言葉で言えば、大きなお金が動いている感じです。アートってそういえばこんな感じだったなあと思い出しました。今まで見てきたオルタナティブな動きとはやっぱり全然違うのです。

でもご心配なく、これからハードコアなアーティストと会う予定なので。
待ち合わせをしていたのは『POST-MUSEUM』のJennifer Teoさん。Jenniferとは、2010年にオーストラリアのメルボルンで開催された「Next Wave」という展覧会で一度ご一緒したことがあり、それ以来の再会です。

あれから6年。なつかしー。

Facebookでは彼女たちの活動は時々見ていましたが、こうしてあらためて話を聞くのははじめてです。

『POST-MUSEUM』は、2007年にJenniferと彼女の旦那さんでアーティストのWoon Tien Weiによって活動を開始。当時はシンガポールにスペースを持っていて、ギャラリー、カフェ、多目的スペース、オフィスが併設した場所だったそう。シンガ ポールでは政府からの援助を受けてスペースを回していくのが普通なのだそうですが、彼女たちは一切そうしたお金をもらわず、カフェと多目的スペースを貸すことでお金を作り、独立したスペース運営をしていたそうです。シンガポールでは、与党であるPAP(People’s Action Party)を支持していない個人やグループには公共スペースの貸し出しが許されていないそうで、そうした状況から『POST-MUSEUM』には、アーティストだけでなくNGO団体やアクティビスト、またパンクミュージシャンなど、さまざまな人々が集まってきていたのだと言います。

2011年にスペースは経済的な理由により閉じてしまいましたが、彼女たちが作り上げたネットワークはさまざまな方向へ広がりを見せ、現在も精力的に活動を継続しています。2009年から続けている「SOUP KITCHEN」というプロジェクトでは、毎週月曜日に約230人分の食事を作り、貧しい人々の住む家へと食事を届けています。全てが整えられているように見える状況から、貧しい人達のイメージを想像しにくいシンガポールですが、日本でいうホームレスのような人々は日中、外を出歩くことを禁じられているのだそうで、政府の用意した住居の中で過ごしているのだそうです。そうした人々に向け『POST-MUSEUM』は毎週月曜日に料理を作って配り歩いているのです。彼ら以外にもこうした活動しているNGOはいくつかあるそうで、なんだかシンガポールの意外な一面を見た気がしました。

また「Singapore Really Really Free Market」というプロジェクトでは、そのタイトルどおり全てが無料のマーケットを開催し、来た人はただで出品されたものを持っていくことができます。そこでは、お金のやり取りでは生むことのできない人と人との関係性やコミニティーが形成されていきます。このプロジェクトは2008年から隔月のペースで毎回場所を変えて開催しているそうで、スーパー資本主義のシンガポールで、こうしたプロジェクトを長年開催しているそのことが、とても興味深く感じられました。

他にも「Bukit Brown」という1830年代からある歴史的な墓地で豊かな森や自然が多く残る場所を、政府がすでに無縁仏しかない墓地であるという理由で高速道路を作るためにその場所を再開発しようとした際、そこでアートプロジェクトを行い再開発の反対運動を展開したりするなど、『POST-MUSEUM』はスペースを失ってもなお、社会的な様々な活動を活発に展開しているのです。

彼らはこうした社会運動だけでなく、海外で開催される大きなアートイベントに度々招待されるなど、アート活動と社会運動をどちらも自然に手がけている感じがして、すごくかっこいいと思ってしまいました。昨今のアートシーンでは「ポリティカルな作品」という言葉がよく飛び交うようになりましたが、 『POST-MUSEUM』の活動はそうしたアート作品とは一線を画す、もっと彼ら自身の生活と直結しているもののように感じられるのです。ジェニファーにどうしてこうした活動を続けているのかを尋ねると、人々が多くのことを考えたり、今とは違うアクションをしていってほしいから、そういった機会や可能性を作る努力をして、自分自身もそれに参加したいのだと優しく話してくれました。いやー、シンガポール、資本主義一色の国じゃなかったわ。

ありがとうジェニファー。

管理された国でこそ管理できない動きを
Post-Museum
http://www.post-museum.org/
https://www.facebook.com/postmuseum/?fref=ts

あしたはシンガポールのもう一つのスペースへお邪魔します。

  • POST-MUSEUM

    Singapore
    設立年: 2007
    アクティビティ: アートプロジェクトの企画運営
    管理された国で管理できない動きを展開するグループ